おけら (朮)

学名  Atractylodes ovata (A.japonica, Atractylis japonica, Atractylis ovata)
日本名  オケラ
科名(日本名)  キク科
  日本語別名  ウケラ
漢名  關蒼朮(カンソウチュツ,guāncāngzhú,かんそうじゅつ)
科名(漢名)  菊(キク,jú)科
  漢語別名  朮、和蒼朮、東蒼朮
英名  
2007/04/06 薬用植物園
2007/04/19 同上 2008/06/01 同左
2007/07/21 同上

2006/09/07 長瀞町

2005/10/23 薬用植物園

2007/10/08 薬用植物園

2016/10/14 野川公園自然観察園 

 オケラ属 Atractylodes(蒼朮 cāngzhú 屬)には、東アジアに4-7種がある。

  A. carlinoides (鄂西蒼朮)
湖北産
  チョウセンオケラ A. koreana (A.lancea var.koreana; 朝鮮蒼朮) 
         
朝鮮・遼寧・山東に産 『中国本草図録』Ⅲ/1387
  A. lancea 
    ホソバオケラ var. lancea (南蒼朮・茅山蒼朮・茅蒼朮・茅朮・赤朮)
         『中国雑草原色図鑑』243
    シナオケラ var. chinensis(A.chinensis;北蒼朮・山蒼朮・蒼朮・槍頭菜・山刺菜)
  オオバナオケラ A. macrocephala(Atractylis macrocephala;白朮・于朮・)
  オケラ A. ovata(var.ternata, A.japonica 關蒼朮・和蒼朮・東蒼朮)

 IPNI・『植物智』は、A.ovata, A.japonica はいづれも A.lancea のシノニムとする。
   
 キク科 Asteraceae(菊 jú 科)の植物については、キク科を見よ。
 漢字 朮は、
   シュツ shú と読む時は もちあわ(五穀を見よ)、
   チュツ zhú と読む時は おけら。
 ただし、日本ではいずれの場合もジュツと読み慣わしてきた。。
 白川静『字統』によれば、朮は呪霊を持つ獣の形。のち秫(もちあわ)の意に用いた。
 藤堂明保『漢和大字典』によれば、朮はもちあわの象形文字、十印に点々と実のついた姿。
 深江輔仁『本草和名』(ca.918)朮及び源順『倭名類聚抄』(ca.934)朮に、「和名乎介良」と。
 小野蘭山『本草綱目啓蒙』
(1806)に別名を挙げて、「白朮 ヲケラ延喜式 ウケラ ウケラガハナ古歌。 蒼朮 ヲケラ サキクサ ヱヤミグサ アカヲケラ ワレモカウ越中同名多し」と。
 李時珍『本草綱目』(ca.1596)朮の釈名に、「山薊本経。楊枹音孚。枹薊爾雅。馬薊綱目。山薑別録。山連別録。吃力伽日華」と。
 本州・四国・九州・朝鮮・遼寧・吉林・黑龍江・河北・内蒙古に分布。
 オケラ属の根茎は、東洋医学では古来重要な薬品。
 古く『爾雅』釋草に「朮は山薊」と載るのは、シナオケラであったろうという。のちに陶弘景
(452-536)は、蒼朮と白朮などを区別した。
 今日の中国では、 ホソバオケラ A.lancea(南蒼朮・茅朮)・シナオケラ A.chinensis(北蒼朮)の根茎を蒼朮と呼び、 オオバナオケラ A.macrocephala(白朮)の根茎を白朮(ハクチュツ,báizhú,びゃくじゅつ)と呼ぶ。『中薬志Ⅰ』pp.308-313 & pp.142-145, 『全國中草藥匯編 上』 pp.282 & 441-442 
 日本では、オケラ属の植物はオケラしか産しないので、その根茎を加工して蒼朮と白朮と称する二様のものを作ってきた。しかしオケラは、含有する成分からすれば、白朮とするべきものであるという。
 今日の日本薬局方では、生薬ソウジュツ(蒼朮)は ホソバオケラシナオケラ又はそれらの種間雑種の根茎であり、生薬ビャクジュツ(白朮)は オケラの根茎
(和ビャクジュツ)又はオオバナオケラの根茎(唐ビャクジュツ)である(第十八改正日本薬局方)。
 日本では、嫩葉を食用にし、また根茎を屠蘇酒の材料の一にする(オオバナオケラの誌を見よ)。
 俗謡に「山でうまいはおけらにととき、里でうまいはウリ、ナスビ」とあるといい、或いは「山でうまいのはをけらにとゝき 嫁にやるのも惜しゅござる」とうたうという
(武田久吉『民俗と植物』に、後者は信州の俚謡という)
 『万葉集』に、

   こひ
(恋)しけばそで(袖)もふ(振)らむをむさしの(武蔵野)
      うけらがはな
(花)のいろ(色)にづ(出)なゆめ (14/3376,読人知らず)
   わがせこ
(背子)をあ(何)どかもい(言)はむむさしのの
      うけらがはなのとき
(時)(無)きものを (14/3379,読人知らず)
   あぜかがた
(潟)しほひ(潮干)のゆたにおも(思)へらば
      うけらがはな
(花)のいろ(色)にで(出)めやも (14/3503,読人知らず)

 3首ともに東歌で、はじめの2首は武蔵国の歌、3首目のあぜか
(安斉可)潟は、常陸下総国境にあるあぜ(安是)(『常陸国風土記』)かという。
 京都の八坂神社で大晦日にとりおこなわれる白朮祭(おけらまつり)では、オケラの根を焚き、その火を持ち帰って新年元旦の火にする(これを「白朮参り」という)
 「昔は呉服屋が反物の土用干しをする際、おけらの根茎を火にくべ、煙でいぶし、カビを防いだ」
(薬用植物園)

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